長野駅前に現れた愚痴聞き屋は誰でも「ただの一般人」扱いする最高のサードプレイスだった。
5月中旬、Facebookで突如こんなイベントの招待が届きました。
イベントタイトルは「愚痴聞き屋」。バナー写真のブラックボードには「無料で愚痴聞きます。」の文字。なにこれ、おもしろそうじゃないですか。
とは言えここは長野県。県庁所在地でありながら閑散としている長野駅前は、どこの駅でもゲリラ的にアコースティックライブや異様にテンションの高い募金集団が出現する花の都・大東京とはワケが違います。
こんな一風変わった企画が長野で本当に開催されるのだろうか。半ば疑いながら駅前に足を運んでみると…。
いた。
しかしこの距離では絡まれて正座させられているようにしか見えないので慎重に接近。どうやら偶然通りかかったサラリーマンの方々の話を聞いていたようです。
件のブラックボードも持参。やはり彼らは無料で愚痴を聞いているようです。
「無料で愚痴聞いてくれるって」
「聞いてもらえばいいじゃん」
並んで座る彼らを見て歩く速度を緩め、指を差していく。通りすがりの人たちはみな興味津々です。「どうっすかお兄さん!」と明るく声をかけますが近寄る人はやはり少ないですね。
そんななかでも彼らに近寄る人たちが最初に口にするのは「なんでこんなことやってるの?」。そりゃあそうだ、気になるわな。なにが好きで見ず知らずの人の愚痴なんか聞いてるのだろうか。
「趣味です」
「ええーなにそれ!?変わってるね」。そんなやりとりから会話がスタート。
そもそもこの愚痴聞き屋は、Facebookの サードプレイス in NAGANO というグループで発信された企画。
サードプレイス(3rd place)
家族などと衣食住を営む「自宅」をファーストプレイス、仕事をする「職場」や勉強する「学校」をセカンドプレイスとしたとき、サードプレイスは「自宅や職場とは隔離された、居心地のよい場所」と定義される。条件や特徴は環境により異なるが、サードプレイスを持つことは総じてライフスタイルに変化を与え、第1、第2の場所での活動をより円滑・充実したものにするとされている。(参考:wikipedia)
近年注目されているこの言葉。一般的に多くの環境(逃げ場とも言える)を持つことがリスクの軽減や人生の充実につながるとされています。
例えば家と職場の往復だけの生活を送っていた人が定年を迎えると、居場所がなくなって喪失感に駆られてしまう、なんて話を聞きますよね。
多くの環境を持つことで自分を表現する場所が増え、主観的にも客観的にも自分を多面的に捉えることができるようになります。そのうちの一つを失ったとしても、他にも複数の居場所を持っていればダメージも小さい。
この企画以前から彼らが立ち上げたこのFacebookグループには入っていたのですが、愚痴聞き屋とサードプレイスの関連性はこの場に来るまではいまいちわかっていませんでした。だけど気付かされました、サードプレイスの本質を。
愚痴聞きに来る人は会社のお偉いさんから学生まで様々。悩みも十人十色です。
その一つひとつに、彼らは本当に、本当に平等に応えていきました。
自分より年下の生意気な学生には容赦なくズカズカと接するし、誰もが知っている会社の社長にも遠慮することなく自分の意見を口にする。
愚痴聞き屋の一人、奥山さんはFacebookに後日談を書いていました。
『サードプレイスの役割の一つには、「日頃背負っている役割からの解放」というものがあると誰かが言ってました。 中学生も社長も、愚痴聞き屋の前ではただの一般人です。平等です。僕たちは同じ目線で会話をしています。』
歳も重ね会社でそれなりに立場のある人はその環境が般化していて、でもそこにどこか息苦しさを感じている。自分が抱えている肩書や責任を守るために、無意識のうちに自分に仮面を被せている。
だからこそ彼らは平等に接する。ただの一般人扱いする。愚痴の奥にある、自分自身でも気づいていない本当の感情や価値観を引き出すために。
家や学校・職場といった、普段過ごしている環境では露わにできない一面をオープンにできる場所、それが愚痴聞き屋であって、それが最高のサードプレイスなんだと。そう感じさせられました。
愚痴を聞くのが趣味っていうのも全く嘘ではなくて、彼らはきっと人の持っているホンネの部分に触れるのが好きなんです。
「えー、もう帰っちゃうの?」
なんて高校生たちに言われながら予定の時間を大幅にオーバーしてこの日は終了。
越坂さん、奥山さん、小林さん、ありがとうございました!
そしてこのたび 第三回愚痴聞き屋 が開催決定。明日6/18(土)の19時半より長野駅前C-oneビル横に彼らが現れます。僕もまた見学させてもらう予定です。
鬱憤の溜まっている方、本音で話をしたい方、単純に彼らに興味のある方。とりあえず駅前に足を運んでみてはいかがでしょうか。
ハタコシ(@h2_hahaha)